



教育学部の玉置ゼミでは、
よい良い学級づくり、
授業づくりを学んでいます。
それを実践する教師に会い、
参考にできる指導を見る学校見学や
現役教師との対話を経験する機会が
設けられています。
またその経験をゼミのブログにつづり公開していることも、
ゼミ活動の特徴です。

石川 百音 さん
玉置 崇 教授
子どもへの寄り添い方は
一律ではない
玉置
教授 私のゼミは「より良い学級づくり」を学び、良い授業ができる教師になることを目的としています。より良い学級は、良い授業をするためのベースになります。また良い授業は、子どもたちと築く信頼関係を基盤とします。こんなことを言ったらバカにされる、という空気が学級にあっては良い授業はできません。分からない時に素直に「分からない」と声に出して言える、専門用語でいう「心理的安全性」が高い学級でこそ、子どもたちは学びを深められます。
石川さん 「学校に行きたい」と思わせてくれる先生に出会え、私も教師になりたいと思いました。教師は子どもを前向きにさせる力を持つことを経験として知り、教師という職業に憧れたのです。そういう教師になるためには、どのように子どもたちに寄り添えばいいか、子どもがどういう気持ちになってるからこう指導したほういい、といったことを考えたり、見本となる先生の指導を見学させてもらったりするなかで、自分がなりたい教師像が具体化してきました。
玉置
教授 よく学んでくれてますね。具体化できた教師像とは?
石川さん 児童・生徒が、学校を自分の居場所として感じられるようにする教師です。家庭に事情を抱える子であっても、学校には自分の居場所があると信じ、先生は自分を大切にしてくれる、友達も自分を必要としてくれていると感じさせてあげたい。
玉置
教授 先生にもタイプや個性はあるので、子どもへの寄り添い方は一律ではありません。それでも「子どもありき」であることは大前提。だから石川さんが言った、子どもがこうだからこう寄り添い、甘えすぎてるなと思えば当然指導せなあかんこと出てくるでしょうし、困っていて何かをしてるなら、徹底的にサポートするという見方や考え方を、学生時代に持てたことは素晴らしいと思います。

「書く」ことによって学ぶ効果
玉置
教授 書くことによって学ぶ効果は、主に2点あります。一つは人に何かを伝える力を養うこと。さらに重要なことは、書くことで自らを振り返ることです。同じ授業を見て同じ話を聴いても、受け取り方は人それぞれ。そこで学んだことや疑問に感じたことを書くことによって、それらを自分の中で明確化させることが大切です。メタ認知といいますが、それはなんとなく感じていたり思っていたりするだけでは不十分で、文章化することが大事。ゼミ生はそのことを十分に理解しているので、授業見学などの後は日を置かず、ブログに報告がアップされます。
石川さん 大学での学習には“やらされている感”がありません。周囲の仲間も当然私も、教師になりたいと思って入学しているので、教師になるために必要なこと、教師になってから大事なことはどんなことでも学びたいし知りたい。こういう本を読んでみたいという意欲が自然と湧きますし、先生もいろいろな本を紹介してくれるため、それらを読んでみる。すると講義やゼミで学んだこととつながってきて、教師に必要なことの引き出しが増えていく感覚です。
玉置
教授 良い教師になりたいという思いがあるから、座学で学んだことや仲間と議論したこと、本から読み取ったことや授業見学などで経験したことが結びつくのでしょう。

教える視点で受ける授業
石川さん 玉置ゼミで学んだことで、大学で授業を受ける視点が変わりました。以前であれば講義の内容を理解することで精一杯でしたが、今は授業をする先生の考えや指導法も考えるようになりました。講義の中で例えばある指示があったら、その指示を出すねらいを想像します。最近のノートには講義内容と併せて、その時に想像した指示の意図を青文字で並記しています。
玉置
教授 そんなふうに授業を受けていたとは……。初めて聞き、驚いています。
石川さん 教育について、たくさんの引き出しを教えてもらったので、授業を受ける立場になって確かめていくなかで、そういう見方を自然にするようになれたんだと思います。
玉置
教授 教員もアップデートしなければいけませんね。例えば情報端末を1人1台ずつ持つ教育が当たり前になってきて、講演に行った先でもどう使うべきかといった質問を受けることがあります。しかし私がこの大学に来た時代にはなかった状況なので、情報学を学びながら助言をし、ゼミでも伝えています。ほかにもこれまでの一斉教育から、学習者それぞれのペースに合わせた自由進度学習へ、といった教育の大きな流れなど新たな教育課題に出合ったらその都度勉強して、これから教師になっていく学生に還元する、そうした勉強を、学生とともに続けようという思いを強くしました。

人文学部・宮原ゼミは、
電子書籍を出版、販売しています。
テーマは、英語の学びを通した
自己変革。
3年生は、
TOEIC®のスコアアップに没頭して、
学び方を学びます。
4年次にはその全過程を振り返り、
自身が主人公の
ノンフィクションを書き上げ、
「学びによって人は変わる」という
メッセージを発信します。

宮原 淳 准教授
纐纈 杏里 さん
TOEIC®のスコアを
確実にアップさせる勉強法
宮原 准教授 宮原ゼミの3年生は、TOEIC®の勉強を通して、自分と直面します。
纐纈さん 私は入学した時からTOEIC®のスコアアップに努めてきました。1年次の9月に受験した時のスコアが510点。そこから800点以上をめざしたものの、2年次の1年間は600点台でくすぶったまま。精神的に弱まってしまった時、まだゼミ生ではなかった私に宮原先生は、投げ出さず向き合い続けることの大切さを教えくれ、最終的に高スコアに達した先輩たちにも停滞期があった事例を紹介し背中を押してくれました。3年生になって宮原ゼミに参加した理由の一つは、ここで学べばTOEIC®のスコアを目標値まで高められると期待したからであり、実際に3年次に800点台に達しました。
宮原
准教授 TOEIC®のスコアは、効率的な勉強法を正しく継続すれば誰でも伸ばせます。そのことは先輩たちが実証しています。しかも先輩たちの記録は高スコアに達した成功体験だけでなく、そこに至るまでに直面した伸び悩みや行き詰まり、間違った勉強法にこだわってしまった失敗の経験を、それらをどのように解消・克服したかのノウハウと併せて伝えてくれています。ゼミの時間に発表者が、その時進めている勉強法の効果のほか、取り組み方に関する悩みや疑問をみんなに伝え、共感や対策法を得られるようにしているのは、課題を一人で抱え込まないようにするためでもあります。独力で進められることはどんどん進めればいい。問題が起きたら状況をオープンにしてみんなで対策を考える。これは社会で仕事を進める原則ですし、それをTOEIC®のスコアアップという共通の目標をめざすなかで、経験していることになります。

私だけじゃなかった悩みや疑問
纐纈さん 宮原ゼミに入るまで、TOEIC®の勉強は一人で取り組むものと思っていました。だからゼミといってもその時間は自分のことだけを考えて黙々と勉強する。そしてもし分からないことがあったらすぐに答えてくれる先生がそばにいる、というものだと思っていたので、勉強法や悩みをみんなの前で発表することに、当初は驚きました。でも、仲間の発表やそれに対する先生のアドバイスを聞くと、同じ時期に似たような悩みを抱えていたり、打開策を探していたりしたことがあり、「私だけじゃないんだ」と共感して、勉強法を改善する参考にさせてもらいました。
宮原
准教授 スコアアップには特別な才能や集中力の持ち主である必要など全くありません。普段よく知る仲間からの刺激こそ力になります。ストイックではなく、無理なく現実的に続けられることが大切です。
纐纈さん 仲間の勉強法を見たり聞いたりするなかで、「そこまで徹底するのか」と驚き、TOEIC®に向き合う姿勢を改めたこともあります。そういう刺激を与えてくれる仲間と勉強できることが、今は魅力だと感じています。
宮原
准教授 就活の実際を見れば、高スコアがその成功を約束してくれるわけではなく、スコアが低くても成功する例はいっぱいあります。だからゼミには、その時点で高スコアの学生が優秀と見られる雰囲気はありません。むしろ、試行錯誤や失敗から多くを学んでほしいと考えていて、そこでドラマが生まれます。一人一人、その人しか書けないノンフィクションが必ず書けるようになります。だから、これまで6年で6冊を出版することができました。纐纈さんが今言ってくれたように、目標に向けてどのように勉強するか、その時の自分とどう向き合うかがスコアアップにも出版にも大切なのです。

地味な真面目さが
社会で強い武器になる
宮原
准教授 ゼミとしてTOEIC®のスコアアップに取り組むのは3年次。4年次は前年度に経験した試行錯誤や苦労を物語論に基づいてノンフィクションとしてまとめ、電子書籍として販売します。
纐纈さん TOEIC®の勉強は、目標を900点に再設定して続けます。一方ゼミでは自分たちの経験を日本語で発行するので、誰に読まれても恥ずかしくない文章力を磨きたい。読みやすく読者に伝わりやすい文章力もゼミで取り組む課題です。卒業して社会に出た時に役立てられる能力になると期待しています。
宮原
准教授 TOEIC®のスコアアップも、読みやすく興味を惹く文章力の獲得も、本人にとっては一大事であったとしても、じつは小さく地味なことを疎かにせずに積み重ねていった結果です。その地道な継続力は、今の時代に強い武器になると信じています。
纐纈さん これからノンフィクションとして伝えることは、自分が苦しんだ時に諦めずに挑戦した記録になるはず。もしTOEIC®のスコアアップを途中であきらめていたら、書くことができなかった文章です。だからこのゼミで身につけたことは、挑戦し続ける精神力なのかもしれません。

経済情報学部の加納ゼミは
2023年度、経済学に関する学術書の
輪読から、
地域の課題を発見し
解決策を提案するコンテストへの
参加に活動を転換。
その1期生になった横谷直也さんと
指導に当たった加納教授が、
課題解決のアイデアを他大学と競った
初のチャレンジを振り返ります。

横谷 直也 さん
加納 正二 教授
名産を通して
地域の知名度をアップ
加納
教授 加納ゼミでは地域課題の解決案を、他大学との報告会で発表しています。参加するのは、岐阜県内の大学や短期大学が加盟する「ネットワーク大学コンソーシアム岐阜」主催の「学生による地域課題解決提案事業」です。このゼミ活動は、横谷さんが3年生になった年が初めてでした。
横谷さん 加納ゼミに参加したのは金融を学ぶためだったため、当初は戸惑いました。ただ金融については、2年次にファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得した時に勉強したので、学生時代にしかできない貴重な体験になりそうな課題解決案の提案に力を注ぐことができました。
加納 教授 横谷さんのグループが考案したのは「飛騨牛の地交地生(ちこうちしょう)」でしたね。
横谷さん 地域活性を課題とし、岐阜県の知名度アップを目標にしました。飛騨牛を取り上げたのは、白川郷のような観光地では現地まで足を運んでもらわなければなりませんが、「食」であれば県外の人にも届けやすいので、飛騨牛を通して岐阜県を知ってもらうチャンスが広がるだろうと考えたためです。
加納
教授 広く知られている「地産地消」という言葉から発想を得た「地交地生」という新語がよくできていて気に入っています。
横谷さん 「地産地消」は地域で完結してしまうため、飛騨牛の知名度が県外で高まりません。全国には松阪牛や近江牛などのブランド牛が各地にあり、そうした他地域と交流するなかで、それぞれの土地ならではの良さを生かせる仕組みを考えようとグループで話し合った結果、「地交地生」という新しいキーワードがひらめきました。他の「地」と「交」わり、お互いの「地」を「生」かす、という意味です。

専門分野の発想にない
可能性の広がり
加納
教授 横谷さんのグループは、飛騨牛という枠組みの中で、エコフィード、後継者育成、販売促進という3つのテーマを立てたのでしたね。
横谷さん 加納先生のアドバイスによるテーマ立てでした。グループの3人が一つのテーマについて議論して進める方法もよいですが、異なるテーマを3本立て、学生各自が一つずつ課題を担当し、残りの2人がそれをサポートしてはどうか、と。その結果、飛騨牛にまつわる課題を多角的な視点で考えることができました。
加納
教授 3つのテーマの中で、横谷さんはエコフィードの担当でした。エコフィードとは、食品の製造過程で出た不要品や副産物、売れ残り食品などを再利用して作る飼料です。
横谷さん エコフィードという単語自体、加納先生に教えられて初めて耳にしたというレベルからのスタートでした。そこでまずは自分なりに調べ、そのうえで畜産業の後継者育成に力を注ぐ高山市と飛騨市の市役所、さらにエコフィードを作る企業に話を聴きにうかがいました。先生にはアポイントの取り方や先方を訪ねた時のマナーを事前に教えてもらい、取材当日も付き添っていただきました。
加納
教授 ヒアリングしたことから考案する解決策には、学問的な裏づけが必要です。一方で現場の話を聴いてより明らかになることがあり、それは経済学等の講義を補完する役に立ちます。研究者は自分が専門とする分野の専門用語を使って考えます。エコフィードであれば、ビジネスエコシステムだ、と。それを学生たちが発想すると「地交地生」になる。その新語には、ビジネスエコシステムという単語にはない要素が含まれていて新しい発想だと感心しました。これまでにない斬新なアイデアが生まれる予感がしました。

大学生は
きっかけ一つで急成長する
加納
教授 2024年度の3年生も地域課題の解決案を提案し、4年生になった横谷さんは卒業研究に取り組みました。卒研は本学部の必修科目というわけではありませんが、私のゼミでは奨励しています。横谷さんは出身地の町を活性化する提案を卒業研究のテーマに選びました。
横谷さん 少子高齢化が進み人口も減っている出身地の川辺町を、町を南北に流れる飛騨川とそこに造られた川辺ダムで盛んなボート競技を柱とした活性化案を卒業研究としてまとめました。町役場へのアポイントやヒアリングなど、3年次は先生にサポートしていただきながらグループで取り組んだ一連のプロセスを一人で進めることができたことに、自身の成長を感じました。
加納
教授 研究を順調に進めていることを聞いて、喜ばしい気持ちになりました。大学生は、きっかけをつかむと急成長を遂げます。そういう学生をこれまでも見てきましたし、横谷さんもその一人になったということです。

看護学部のゼミは
学生の主体性に重きを置き、
卒業研究ではゼミ生の興味・関心を
テーマ選びの基本としています。
ゼミ生の河合萌桃さんは
能登半島地震のニュースで
被災地での看護活動を知り、
災害医療の大切さを
卒業研究のテーマに選び、
論文作成の指導を受けました。

河合 萌桃 さん
田島 真智子 准教授
※取材当時
うまくできないから、
たくさん練習できる
田島 准教授 河合さんが2年生の時の「老年看護学実習」は、コロナ禍で医療機関での実習ができませんでした。そのため授業では認知症に関する映像を観て、気づいたことを発表してもらいましたね。「気づき」ですから、正解はありません。しかも2年生なので、まだ看護について学んだことが少なく、現場経験もありません。それにもかかわらず河合さんは映像から多くを学んだことが分かり、驚いたのを覚えています。
河合さん 1年次の後期に医療白衣を着て受ける科目が始まってからは、看護に直接つながる専門的なことを学んでいるんだなと気持ちを引き締めていました。ところが実技が下手で……。記憶に残っているのは、シミュレータを使った採血の演習です。幼い頃から注射が苦手で、予防接種のたびに怖くて泣いていたせいか、シミュレータ相手でも手が震えてしまって、血管(部)になかなか刺せませんでした。うまく刺せて担当の先生に合格をもらえたら終わりだったので、最後の一人になってしまってしまいました。
田島 准教授 それはつらかったでしょう。
河合さん シミュレータの腕を刺し跡だらけにしてしまいましたが、看護の実技は初めて経験することばかりなので、すぐにできないのは当たり前。だから練習あるのみと決めてうまくできるまで繰り返し、ほかの人より数多く練習できたことはラッキーと思っていました。
田島 准教授 河合さんはどんなことも前向きに捉えますよね。そして自分で考え、自分から動いてくれました。卒業研究でも「1」を教えると「10」の成果を返してきた。しかも誰よりも多く研究室を訪ねてきてくれたので、1回の指導時間が短くて済みました。
河合さん 週に1度は質問をしに、先生の研究室を訪ねていました。確かに、友達に聞いた面談時間に比べると、短いと感じていました。その分自分で進められる時間を増やせるので、指導時間が短いのはありがたかったです。

国家試験対策と
卒業研究のつながり
田島 准教授 4年次は卒業研究と国家試験対策を同時期に進めるので、やらなければいけないことがたくさんあって大変だったでしょう。
河合さん 国家試験対策、卒業研究とも、時間に余裕があったならやれたことはもっとあったかもしれません。でも卒研も国試対策の一つと考えることができました。というのも国試の過去問題を解いていたら、卒研のテーマにした災害看護に関する問題もあって、卒研も国試対策につながっていることが分かったからです。そもそも卒研も国試対策も、看護師をめざす自分がやるべきこと。相手がいる臨地実習は苦労しましたが、卒研や国試対策は自分のペースで頑張ればいいので、大変だと感じてはいなかったように思います。
田島 准教授 自分でどんどん進めてくれて、卒業論文の提出も一番でした。

温かく迎えられた
研究室の訪問
河合さん 田島先生は、いい意味で先生らしくなくて、研究室を訪ねるといつも「よく来てくれたね」という感じで温かく迎えてくださいました。面談もどんなに些細なことを質問しても絶対に怒られないことが分かっていたから、聞きたいことをなんでも聞けましたし、先生が指導してくれる内容もリラックスして聞けたので飲み込みやすかったんだと思います。
田島 准教授 相手の言おうとしていることを正しく解釈して対応できる河合さんの素直さは、看護職に就いてからも強みになるはずです。
河合さん まずは入職する病院で経験を積み、いずれは災害医療に携われる看護師になりたいと思っています。私が看護師をめざしたのは、日常ではない何かがあった人の役に立てる仕事に就きたかったから。自然災害の被災地こそ、医療や看護の力を求める人がたくさんいると思っています。
田島 准教授 河合さんは人の話に耳を傾ける素直さと、知った振りをせずに学びを深めていこうとする謙虚さを併せ持っています。ぜひその姿勢を忘れずに成長し続けてください。
河合さん 卒業後も学び続け、一日でも長く看護師として働くことがこれからの私の目標です。